スポーツ医療の難関資格「アスレティックトレーナー」 資格取得をアプリで支援
私は現在、フリーランスのアスレティックトレーナーとして活動しています。病院や大学、養成学校と契約していますが、スポーツ選手の競技復帰を目的としたアスレティックリハビリテーションを行ったり、大学のサッカー部でケガをした選手のサポートをしたりしています。 また、アスレティックトレーナー養成学校では講義もしていて、現在は3校で約70名の生徒を指導しています。
Qualified Athletic Trainers代表 佐藤哲史 氏
アスレティックトレーナーの取得者を増やし、日本のスポーツ医療の課題を解決したい
アスレティックトレーナーはスポーツ指導者やスポーツドクターと同じく、日本体育協会が認定している資格です。資格取得後は、スポーツチームや病院などと契約をして、けがをした選手の応急処置や復帰までのアスレティックリハビリテーションを行えます。ほかにも、パフォーマンス向上のトレーニング指導など、資格で学んだ知識でスポーツに関わる指導を行えます。
受験科目には筆記試験と実技試験があり、2014年は筆記試験を約2,000名が受けました。アスレティックトレーナー検定試験の合格率は10%程度ですので、2014年新たにアスレティックトレーナーになれるのは約200名。医療系国家資格や他のトレーナー資格に比べると、はるかに合格率は低いです。
私が養成学校や勉強会などで資格取得のサポートを行う理由は、スポーツ医療(学校体育の場やアスリートに対しても)の現状に多くの課題を感じているからです。より多くの人が、スポーツでの怪我からきちんと復帰したり、スポーツで怪我をしないための指導を受けたりするには、スポーツや健康、医療などの幅広い知識を兼ね揃えたアスレティックトレーナーの資格取得者が増える必要があると考えています。
しかし現在、日本のアスレティックトレーナーの資格取得数は3,000名程度。リハビリの専門家である理学療法士の人数は10万名程度ですが、スポーツに精通した理学療法士はごく一部なので、限られた医療機関に行かなければ十分なサポートを受けられないのが現状なのです。だからこそ、スポーツ・健康・医療に関する専門的な知識を持ったアスレティックトレーナーを増やすことと、それによって日本のスポーツ界を発展させることが私の目標であり、原動力になっているのです。
3年分の過去問題をzuknowでコンテンツ化。生徒全員が筆記試験に合格
iPhoneやiPadで学習に使えるアプリを探していたところ、日本e-Learning大賞でzuknowが「EdTech賞」を受賞したことを知り、使ってみたのがきっかけです。 アスレティックトレーナーの資格試験対策には、教科書や参考書のほかは日本体育協会のホームページ上でダウンロードできる3年分の過去問題しかなく、受験生にとって勉強しづらい環境でした。
そこで、ダウンロードしたPDF形式の過去問題をExcelに書き換え、200問あった5択の問題を1問1答の○×形式に作り直して、zuknowのコンテンツにしたのです。
AT H24 基礎 (1~20) | 友達とクイズで競える学習アプリ zuknow(ズノウ)
かなり大変な作業でしたが、みんなに合格してもらいたい一心で作りましたね。結果、みんな喜んで使ってくれましたし、アプリなので机に向かわなくても勉強できると好評で、「○○さん、いつもランキング1位だね!」「やっと2位になれた!」といった会話をよく耳にしました。
何よりうれしかったのは、難しい試験にもかかわらず、実習担当している学生全員が筆記試験に合格したこと。これは本当にすごいことなんです!
カード学習画面(左下)と、クイズ学習モード(右下)
学生たちは積極的に勉強会を開催するなど、全国でつながりを持っているので、zuknowのアプリも瞬く間に広がりました。今では、私と直接つながっていない学生も使ってくれていますし、私がFacebookに投稿したzuknowに関する情報を見て、ほかのアスレティックトレーナーの教員も使ってくれています。ATの資格試験勉強は医療系の勉強にも役立つので、アスレティックトレーナーの試験対策をしている学生以外も使ってくれているようですね。
今は過去問題をコンテンツ化しているだけですが、今後は教科書からも問題を作りたいですね。加えて、現役で合格できなかった人向けの勉強会や、zuknowのグループ機能を使った学習の動機付けもしていきたいと考えています。
同じ結果を出すなら「楽しく学ぶ」工夫をする
単純な暗記帳だったら面白くありませんが、zuknowは制限時間付きのクイズ形式でゲーム性がありますし、ランキングが出るのも学生にとって面白いポイントだと思います。勉強という行為に対するハードルは下がりますよね。
ただ、コンテンツを配信する立場からは、直接メッセージを送る機能やSNS要素があるといいなと思います。 学生は適応が早いので、体験する機会さえ設ければ、zuknowは広がるツールだと実感しています。実際、鍼灸の学校に通う学生のなかにはツボの暗記帳を作って勉強している人がいますし、高校の試験用に生物の暗記帳を作った女子高生もいます。
隙間時間を活用できるので、通勤通学時間を活用してzuknowで勉強する習慣がつく人が増えればいいですね。私は単純に「つまらない勉強が嫌い」なので、同じ結果を出すなら、楽しく学んでほしいと考えています。学ぶ楽しさを感じてもらえる工夫は、今後も続けたいです。